課長のケーキは甘い包囲網
頬にキスしたり、後ろから囲って料理を教えたり、まるで付き合いたての恋人まがいのことはしている。
中学生か高校生のような距離感だが……。
春日のはなしを聞いた限りでは、俺のことを多少は意識したり、色々心配してくれているんだろう。
彼女は俺を上司だが、兄のような感じがすると言っていた。兄のポジションではまだ恋人になるのは難しい。
ただ、最近彼女に料理を教えていると初心を思い出す。俺が作った料理を笑顔で褒めて喜んでくれる。
忘れかけていた自分のスイーツを喜んでくれる人のために作りたいという気持ち。
長いこと作ることが怖くなり逃げていたが、ケーキをもう一度作ってみようかという気持ちにようやくなった。
そして、それがこの間の誕生日ケーキに繋がったのだ。
このトラウマを乗り越えるきっかけが彼女だったとすると、俺にとって彼女はもうなくてはならない存在になりつつある。
どうやって気持ちを伝えようかと考え始めた。