課長のケーキは甘い包囲網

「……ええ!?あ、お酒の匂いがする。課長酔っ払ってるでしょ。ダメですよ、酔って女の子にキスとか、捕まっちゃいますよ」

「そうだな。好きでもない奴にそんなことしたら捕まるかもな」

「そうです。いけませんよ。今日は特別に許してあげますけど」

「別にいいんだよ。好きな女にキスしたんだから……」

 菜箸を持ってつまみ食いをする直前だった彼女は、挟んでいたホタテを鍋に落っことした。

「……い、今なんて?」

「だから、好きな女にキスしたって言ったんだよ」

 キョロキョロと周りを見て、俺を見て、じっとしている。可愛い奴だな、本当に。

「周りに誰かいたか?おそらく、お前と俺しかいないけど」
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