課長のケーキは甘い包囲網
「別腹って言葉を知らないんですか?どんなときも入りますからご心配には及びません」
「……そうかよ」
「はい。ここに来てから、私すっかり太っちゃった。桜井さんや武田君にも指摘されて、ちょっと反省しているんです」
「へえ」
「まるで、新婚の旦那さんみたいでしょ。美味しい料理を奥さんに作ってもらって食べまくって太る。まさか、それが課長に作ってもらって食べてたなんて知られたら生きていけません」
「ふーん」
「あ、あの。パウンドケーキ切ってきます」
「いや、いい」
そう言うと俺は立ち上がり、袋を持ってキッチンへ入った。
袋からリボンのかかった箱を持ち上げて、包装紙を外して箱を開けた。