課長のケーキは甘い包囲網

「出来ましたよー。さてと、またコーヒーも芸がないから、紅茶入れますね。課長は座っていて下さい。ご飯のお礼に私がいれますからね」

 お腹がいっぱいになってご機嫌になったのか、鼻歌を歌いながらお湯を沸かしてカップを出している。

 俺はそんな彼女を見ながらひとりケーキを持ってテーブルへ戻った。

 鍋は蓋がしてあり、横にどかしてあった。テーブルは綺麗に拭いて片付けてあった。俺はケーキを向かい合わせに置くと、ドスンと座った。

 もう一度カードを出してそっと見た。そして、腹が立って、そのカードをゴミ箱へ捨てた。

 俺のケーキが食べたい?俺が作れなくなった状況を知っているくせに、あいつは無視して来た。

 今更なんだ。結婚するからけじめで連絡をしてきたんだな。

 有紀に未練があったわけではない。ただ、無性に腹が立った。

 苦情問題の原因がわかり、謝りたかった俺は何回か連絡した。だが、メールや電話は全て無視されてきたんだ。

 田崎が紅茶をポットに入れて運んできた。ケーキをひとくち食べて顔をぐちゃぐちゃにして喜んでる。美味しいしか言わない。
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