課長のケーキは甘い包囲網

 そう言って部屋に戻った。彼女がじっと俺を見ていたが考える余裕がなかった。

 月曜日、俺は会社で様子が変だと皆に言われたが、とにかく今日中に有紀と会って決着を着けようと決めていた。

 ケーキを作れなくなっていたのは、きちんと有紀と終わりに出来ていないからだと思っていたのもある。

「……早かったわね」

 ホテルのカフェで彼女と向き合った。

 あれから五年経っていた。少し大人びて自信がついたんだろう、目の力も強くなり、プライベートの幸せが彼女の美しさに磨きをかけていた。

 会った瞬間に少しの悔しさもあったが、別れて正解だったんだと思った。

「久しぶりだな。さあ、突然姿を消した理由を教えてもらおうか」

「今更だけど、色々と本当にごめんなさい」

「あの客のことは聞いたか?気づかず、すまなかった」

「そんなことない。あなたは会社と私の間に立って色々してくれていた。それに彼女のことは……そうかもしれないと思っていた」
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