課長のケーキは甘い包囲網

「……やはりそうだったか」

「彼女が言ってきたのよ。正直、彼女のようなパティシエを雇う会社自体に問題があると思った。彼女が使えないのは前からわかっていたしね」

「……は、お前らしいな。それで会社に呆れて、俺にも見切りを付けたのか」

「やめて。あなたとはライバルであるうちは良かった。でも付き合うようになってあなたの優しさがあなたの能力を狭めていくのを目の当たりにしていた。何度か言ったはずよね」

「ああ。俺らしさを出せということだろ?コンビのお前と話し合うと必ずぶつかる。だが、お前が折れる性格じゃないのもわかっていた」

「だから、私がいなくなった。あなたに我慢をさせているのに気づいていたけど、自分が変われないのもわかっていたから」

「……イチジクのケーキ。見事だ。さらにお前が目指す所に近づいているのがわかった。俺も遅くなったが巻き返す」

「もしかして、ケーキを作れるようになった?良かった……」
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