課長のケーキは甘い包囲網

「……何なのよ、急に。ふふふ。でも良かった。もう大丈夫ね」

「ああ、有紀。幸せになれよ」

「あなたもね」

 俺は決めた。すみれにきちんと告白する。

 おととい、ケーキを作れるようになったと上司に報告した瞬間、元の部署に戻ってくれと言われた。

 篠田課長と専務がうまくいっていない。そのせいで新しい商品も生まれていない。

 ある意味うちの会社の危機だ。売上も落ちていて、入社希望の新人が少ない。

 俺がこの会社に残ったのは、今このときのためだったのかもしれない。向こうでやるべきことはわかっている。

 それには……すみれといることで俺は俺らしくいられるとわかったんだ。彼女の笑顔が俺にやる気をくれる。

 さあ、早く帰ってあのパウンドケーキを作るぞ。アイツの大好きなあのケーキを生み出したのは実は俺だったと教えてやろう。
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