課長のケーキは甘い包囲網

 熱はなかったが、休んで下さいと言うと、いつもなら大丈夫とか言うのにすぐに部屋へ戻っていった。

 おかしい。絶対何かあったんだ。

 春日課長にもう一度聞いてみようか。このケーキを持ってきたのは課長だし。

 私はどうしようと考えながら、とりあえず鍋をコンロに戻そうと持ち上げて歩いたら、ゴミ箱が目の前にあって足に当たってゴミが出てしまった。

 急いでテーブルに鍋をおいて、ゴミを拾って入れていたら、グリーティングカードのようなものに女文字が目に入った。

 誠司って課長の名前だよね……これって、カードの端にケーキのかけらがついてる。ケーキの中に入っていたんだ、きっと。そうだ、確かこのケーキのお店って。

 私は急いでキッチンへ戻ると、袋を見た。ツインスターホテル内のカフェレストラン。カードにケーキのかけらがついていたってことはケーキの中にカードを入れられる人。きっとこのホテルでパティシエをしているんだ。

 おそらくケーキを自分で作って、それを元彼である課長に食べて欲しかったんだ。有紀さんはおそらく課長の元カノだ。ホテルのカフェでパティシエをしているんだろう。
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