課長のケーキは甘い包囲網

 でも突然出て行くのはいくら何でも失礼だ。それに、直属上司。ギクシャクすると周りにも迷惑。大人としてキチンとお礼を言って出よう。お金もおいて。

 私はそう思うととりあえず、台所を片付けようと思った。

 カードを捨てるのは忍びなかった。課長の代わりに、汚いところを拭いて、私は引き出しにしまっておいた。

 こうしていいのかわからないけど、捨てるよりマシだと思う。課長はどうして捨てたんだろう。

 次の日の日曜日。課長はやっぱり部屋にこもりがちで、覗くとベッドで寝ていることが多かった。

 熱が出たのか心配で、そっと部屋に入って課長が寝ているところへ行くと顔色を見た。なんだか苦しそうに寝てる。疲れているんだろう。

 部屋を出て行こうとしたら、何か聞こえた。課長が何か言ってる。私のこと?ベッドサイドへいってみると、聞こえた。

「有紀……やめろよ」

 ハッキリと聞こえた。課長の顔を見た。私は怖くなって、部屋を急いで出た。
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