課長のケーキは甘い包囲網

 そう言って、ベッドへ入るとまた私をいじりだした。

「ちょ、ちょっと、課長、これから会社行くんでしょ?」

「ああ、午後からだ。まだ時間はたっぷりあるぞ。そうだ、課長はやめろ」

「え?」

「俺だってすみれって呼んでるだろ。俺の名前知ってるんだろ?」

「……誠司さん」

「そうそれ。いいな。これからはそうやって呼んでくれ。それから、引越はなし。あっちも解約するぞ。きちんとここへ越してこい」

「……そんな。親にも一応連絡しないといけないし、同棲だときっと怒られます」

「花嫁修業のために料理を教えている。しかも、部屋も別に一応ある。いや、待てよ……」
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