課長のケーキは甘い包囲網
「ええ。おかげさまにて成長しました。でもそれも多分、桜井さんのお陰です」
桜井さんがにっこりと隣で笑う。
「そう?これのこと?」
桜井さんが団扇を見せた。推しを応援するときに使う団扇。
そこにはキラキラモールが団扇のカーブに沿って囲ってある。真ん中には『確認した?』という文字が書かれている。
そう、つまり私のための団扇。桜井さんは私の仕事を見ていてやばいなと思うとき、心配そうにそれを私に掲げるというわけ。
実は桜井さんはアイドルに推しがいるらしい。
あんまり美人なのに恋バナをしないなあと思ったら、お金は使い道があって、デートに使っている場合じゃないと言っていた。それがどうやら、推しを応援する活動らしい。
地方でのライブにも行くらしく、有休も有効活用していると嬉しげに話していた。
ある日突然、私にこの愛らしい団扇を作ってきて見せてくれたときは歓声をあげてしまった。