課長のケーキは甘い包囲網
コンビニのある駅の近くにうちの会社の店がある。話したことも顔を合わせたこともないが、その店のバックヤードから覗くと商品を買いに来ていた彼女が何度も見えたのだ。
彼女はシフトが上がる時間になると、よく買いに来ていた。
俺は家が近いのもあって、店の状況を把握するため顔を出すことがあった。
いつも彼女はショウケースを嬉しそうにニヤニヤしながら眺めている。
その顔が面白いのだ。店員が彼女は常連だと教えてくれた。そして、いつも何かいいことが会った時、必ず買いに来るみたいですと教えてくれたのだ。
あの日……。俺が助けた日も彼女は来た。
そして嬉しそうにショウケースをニヤニヤと眺め、いつもと同じケーキを買って帰っていった。
彼女の店員に見せるえくぼが見える綺麗な微笑みを見るのが好きで、今日はこの微笑みを作る手伝いが出来たと嬉しかったのを覚えている。