課長のケーキは甘い包囲網

 焼きたても美味しかったけど、二日目の美味しさは驚き。愛があるからな、とかキザなこと言ってたけど手作りってすごい。

 私も誠司さんのご指導のお陰で、料理はそこそこ出来るようになってきたけど、ケーキやスイーツはできない。

 そこはやっぱり彼の本業だと思うので、作ってもらって食べる専門になりますと宣言した。その時に見せてくれた誠司さんの嬉しそうな顔は忘れられない。

「すみれ」

 その日の夜。ご飯を食べ終わったら彼から言われた。

「なんですか?」

「明日、アパートに挨拶へ行くって言う話、ひとりで退去日とか相談してきてもらっていいか?」

 実は、引越の続きをやりつつ、挨拶しようと話していたところだったのだ。

「はい、大丈夫です。用事が出来たんですか?」
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