課長のケーキは甘い包囲網

「いいですよ。きっとがっかりされるから会いたくありません。あ、部下っていうことで紹介して下さるならいいですけどね。お店へお母様見に行こうかしら?」

「なんだそれ?」

「まあ、いいです。じゃあ、そのお店へ行くんですね?」

「ああ。来て欲しいと言われてね」

「それで、どうして専務のところへいらしていたんですか?取引のご挨拶?」

「いや。それもちょっと色々あってだな」

「いいですよ。色々あるんですか、大変ですね。じゃあ、頑張って下さい」

 誠司さんは、きっぱり言い切った私を見てため息をついた。

「お前は妙にさっぱりしていて、こういうときありがたいような、かといって寂しいような、俺は複雑な気持ちだよ」
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