課長のケーキは甘い包囲網
専務は俺を戻すために、実家の母を巻き込んだ。母は専務と知り合いだった。
実家の商品を別ブランドで売ることが出来れば、相当利益になる。
俺の開発課への復帰は断れる状態ではなかった。
それで、商品のことを相談にきてちょうだいと言われたが、嫌な予感がする。
店に着いてすぐに客間に案内されて、見れば座っているお嬢さんがいる。すみれよりは少し年上の落ち着いた感じの女性だ。
「誠司。都さんは父さんの会社の常務のお嬢さんなのよ。都さん、これがうちの息子です」
父は砂糖を作る会社に勤めるサラリーマン。母とは仕事を通じて営業に来ていて知り合った。
「初めまして。木村都です」
「こちらこそ、沢島誠司です」
「あら、お似合いだわ。年齢も三つ違い。ぴったんこよ」