課長のケーキは甘い包囲網

 俺は会議なので、夕方まで戻らなかった。帰ってきた頃、新人二人の様子が心配になって見に来た。すると、武田は須田に頼まれて備品を運ばされていた。須田はたくさんの備品運びを武田が来るのを待ってやらずにいた。だから、これは想定内。

「武田君、大丈夫か?」

 すると彼はにこにこしている。やはり頭より身体を使う方が得意だったのか。それはそれで心配だ。

「ええ、大丈夫です。こういう仕事はバイトで慣れてます。引越のバイトだったんで、重たいものを運ぶのは日常茶飯事でした」

 ガッツポーズをすると筋肉こぶが浮かんでいる。すごいな、さすが元ラグビー部。

「そうか。須田は相当助かるだろう。喜んでいただろ?」

 見ると須田はデスクで電話している。のんきなもんだ。

「ええ。ちょっと色々教えて頂いたのはいいんですが、僕すぐ疲れちゃったんでだめですね。明日からまた頑張ります」

「ああ、頑張ってくれ」

 そう言って肩を叩いた。
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