課長のケーキは甘い包囲網

「そうですか……」

「そうだ、すみれから聞いたが、あなたはパティシエだとか?どうして人事にいるんだ?」

「それはですね、最初は商品開発のほうへいまして、ちょっと色々あってこちらへ。ただ、来月から戻ることになりましたので、また白衣を着ることになりそうです」

「ん?パティシエと言ったのか?」

 お父さんが驚いた顔をして彼を見た。

「はい。製菓学校出身なんです。実は母の実家も洋菓子店でして、父は砂糖会社のサラリーマンをしています」

「あらまあ。そうだったの。お父さん、良かったわね。同じ畑ではないけど、全く違う畑じゃないからあちらにも説明しやすいし、ありがたいわ」

「それですみれに料理を教えていたのか?」

 父さんが誠司さんに言った。
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