課長のケーキは甘い包囲網
「……桜井さん。間違えてばっかりですみません。疲れたときは何か食べてもいいんですか?デスクの上にうちの焼き菓子置いている人がいますよね」
彼女の視線の先には食いしん坊で有名な伏見の机が見えた。机の上には数個の菓子が置いてある。彼女はうちの新しい商品をすぐに買って来て食べている。そういえば、田崎が面接で言ったことを実行しているのが伏見かもしれない。うちは食いしん坊だらけだな。
「あの席の伏見さんは、新商品やうちの気に入りの商品を常にストックして食べている人なの」
「そうなんですね!私もああなりそうです。疲れたらお菓子食べたくなるんです」
すると桜井が小さい声で言った。
「私は甘い物、実は苦手なの……」
「ええ!?この会社にいるのに?桜井さん、どうしてうちに入ったんです?」
「それは、他が受からず……ああ、いや、まあ食品会社を回っていてここになったというか……」
そう、桜井は甘い物が苦手で酒飲み。女酒豪と呼ばれるうちの一番の飲み助だ。営業には行きたくないと言っていたのは甘い物を食べられないからだ。まあ、食ってない奴が営業してもしょうがないからな。