課長のケーキは甘い包囲網
「えっとですね、この部屋はすでに何もないんです。引越準備中で……今、そっちに行きますから待っていて下さい」
私はそう言うと、急いで窓を閉めて、鞄を持つと外へ出た。坂田先輩はアパートの前に立っていた。何故スーツ?ああ一応御曹司だから?まあ、いいや。少し太ったというのは本当だった。メガネも掛けていて誰だかこれじゃわからないよ。
私は、Tシャツにジーンズという、すごい軽装。今日はただひたすら、部屋の片付けのために来たから、すごい不釣り合いな私達。
「えっと、あのですね、もしかして私に会うためわざわざ長野から来られました?」
「そうだよ」
「……いなかったらどうする気だったんです?今日は平日ですよ。たまたま午後半休でいましたけど」
「最初、会社に連絡した。そしたら午後半休だと言われて、こっちに来たんだ。良かったよ、こっちにいてくれて……」
「まさか、お父さんが連絡先を教えたんですか?」
「そうだよ。一応話は聞いたけど、一方的すぎる。本人と直接話さないと納得できないからと伝えたら、教えてくれた」