課長のケーキは甘い包囲網

 フォークをこちらに向けながらすごい勢いで話し出した。うーん、色々残念な人だな。社会人になった今、昔は生温かい目で見てあげたことも、今はちょっと気になる。

「その気の訳がありません。卒業して直接先輩から一度も連絡を頂いてませんし、お会いしてもいませんよね?私は全く本気にしてませんでした。大体、どうして私?家柄とか考えるお見合いなら、先輩にぴったりのもっといい条件のお嬢さんが大勢いるでしょう?」

「君とは委員会で一緒に役員をしたし、知った仲だろ。今更会わなくても見合いを申し込んだ段階で僕の気持ちは伝えたはずだ。少し早いけど、代替わりと同時に結婚したいんだ。お父さんの話だと正式に見合いをしてもらってそのまま結婚になるはずだったんだよ」

「なるはずって何ですか、それ?父から説明があったはずですけど、私、結婚前提にお付き合いしている方がいて、その人とすでに同居しているんです。今日たまたまこちらに来てましたけど、普段はこっちに住んでません。申し訳ないですが、縁談はお断りします」

「そんな一方的な話、納得できない。大体、君の相手って普通の家の男だろ?」

 普通の家って……先輩こんな人だったの?なんか、前はもう少し穏やかな目をしたおどおどした感じの人だったのに、見かけだけでなく、中身もちょっと……ありえない。
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