課長のケーキは甘い包囲網
嘘でしょ?ひと言もそんなこと言ってなかったよ。
「すみません。父からそういう話を全然聞いてませんでした。父に聞いてみますけど、私の気持ちは変わりません」
「それを言うなら僕だって気持ちは変わらないよ。そろそろ結婚出来ると楽しみにしていたのに、突然断られた。訳わからない。男が出来たなんて言い訳だと思ったから見に来たんだよ。その同棲男に会わせてもらおうかな。君が騙されていないか見てあげるよ」
私はイライラしてきた。
「彼はこの間実家に挨拶へ来てくれました。その時、両親だけでなく兄とも会いました。その上で父も納得してくれて、見合いは父から断ってくれるということになったんです。坂田さんと会わせる必要はありません。すでに終わっている話です」
「田崎さん、君、そんな子だった?随分言うようになったな」
「それを言うなら先輩も変わりましたね。私達、気が合わないと思います。早く気づいて良かった、それに、間違いがないうちで良かった」
「おい、間違いって失礼だろ!」
「私のことではありませんよ。そちらに迷惑がかかる前で良かったです」
私はレシートを握りしめて、立ち上がった。