課長のケーキは甘い包囲網

 意地悪。恋人なのに、どうして会社ではこんなに厳しいの?まあ、料理を教えるときも結構厳しいけど、出来ると横でハグしたり、頭撫でてくれたり……家では愛情がある。でも会社は冷たい。悲しすぎる。

 伏見さんが課長を見て言った。

「課長こそ、田崎さんと離れて生きていけるんですか?彼女をいじめたり、いじったり出来ないと病気になるでしょ?」

「ああ、そうだな。だから、今集中的にいじめてるわけだよ。もう、出来なくなると思うと悲しくてな……」

 嘘泣きするポーズをしている。須田さんもこっち見て笑ってる。彼も営業へ異動になる。武田君の下は入ってくるらしい。いいなあ。

「田崎、ちょっと……」

 課長が私を手招きした。もう、嫌だ。また何か頼む気?

「またですか?さっきのはまだ大分かかりますから、次のは……」

「そうじゃない、ちょっと……」

 そう言うので、苦笑いをして私を見ている先輩方をおいて、ついていく。廊下へ出て、会議室へ入る。
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