課長のケーキは甘い包囲網

 ああ、面白い。やっぱりこいつを入れて良かった。吹き出した俺に気づいたんだろう。恥ずかしそうに赤くなってこちらを見た。桜井はそれを見てため息を吐いた。

「田崎。マカロンはもう売り切れかもしれないが、フルーツケーキはまだあるかもしれないぞ」

「え?」

「じゃ、桜井頼んだぞ。田崎、定時まではまだ時間が少しある。頑張れよ」

 驚いた顔をしている田崎を残して、ほくそ笑みながら後ろを向いて自分の席へ戻った。

「沢島。自分のところだけ男女ふたりも新人いれるなんて、お前人事だからって勝手じゃないか。俺のほうにも回して欲しいって言ってあっただろ」

 振り向くとそこには同期で親友の春日。営業二部一課の課長だ。ちょくちょく息抜きに人事くる。そして俺相手に雑談をする。

「何をこんなところで遊んでるんだよ、春日。お前のところには去年二人入れたはずだが……あ、そうか、一人辞めちゃったんだよな。だから、男しかいないんだったな」
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