課長のケーキは甘い包囲網

 そう言うと、腕を引っ張って急にキスをした。深いキス。足が折れそうになって、身体をぎゅっと抱き寄せられた。

「……ん、ん……ああ……」

 私の目を親指でこすり、唇を離した。

「口紅落ちた。悪い。じゃあな」

 そう言って、自分の唇を指で拭くと出て行った。

 とうとう、異動が発表になった。

 なんと、彼の代わりに春日課長が人事へ異動になった。彼が楽しみにしてろと私に言ったのはそういうことだったのか。

 そして、彼は予告通り商品開発課長になった。つまり、パティシエ復活だ。

 須田先輩は春日課長のいた営業部へ異動になった。そして、新人の男の子が人事に入ることも発表された。
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