課長のケーキは甘い包囲網
「返事は却下です。とりあえず、帰りましょう。そして、酔いを覚ませば少し落ち着いてきますから……」
「酔ってない!大体、お前が男とふたりで飲んでいるということに気づいた段階で、酔いなんてすっ飛んだ」
手をぎゅっと握られた。タクシーに押し込まれて、車内では重苦しい雰囲気でお互い無言だった。
部屋に入り、それぞれシャワーを順番に浴びた。私は自分の個室へ戻ろうとしたら、腕を引っ張られた。
「……おい。どうしてそっちで寝るんだ?大体、そういうところからして怪しい」
彼の顔を見た。背伸びをして、両手で彼の顔を挟むと目を見て言った。
「それは、しばらく誠司さんが夜の飲み会が落ち着くまでって話をしましたよ」
彼を挟んでいた両手をそれぞれ彼に握られた。
「今日は一緒に寝るぞ。さっきの話もある」
腕を引かれて彼の寝室へ。ベッドに突き飛ばされた。ひどい。振り返ると怒ってる。どうして?私だって頭にきた。
「ハッキリ言いますけど、川村君に何を言われようとどうこうなる気は一ミリも私にはないです。だって、誠司さんとは結婚前提で同棲して親にも紹介してるんですよ。それで私がどうして誠司さん以外とどうにかなるの?」