課長のケーキは甘い包囲網

 私を見て彼女はウインクした。

「……そんな」

「何しろケーキをもう一度作れるようになったのはあなたのお陰だって春日君からも聞いたわよ。彼と幸せになってね」

「お相手はここの方なんですか?」

「そう。ホテルマンよ。結婚式は良かったらうちでやって。そうしたら、ふたりのウエディングケーキは私が作るから……」

 そう言って、彼の誕生日ケーキを作ってくれると約束してくれた。料金を聞いたらタダにするという。

「だ、だめですよ。色々教えてくださったんです。手間もかかるんだから、お支払いします」

「そうねえ。私へ会いに来てくれた田崎さんの気持ちが嬉しいの。今日は奢らせてくださいね。その代わり誕生日ケーキは材料代くらいは料金頂きますね。でも、うちのケーキ高いわよー、いいの?」

 そ、そうなんだよね。ここのケーキすごく高いんだよ。はあ。
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