課長のケーキは甘い包囲網
「うん、うまいぞ。合格だ。特にこのカボチャのポタージュうまいな」
「本当ですか?ありがとうございます、カボチャプリンの師匠のお陰です」
ふたりで顔を見合わせて笑い出した。その後、彼は真面目な顔をして話し出した。
「今思えば……すみれは俺の作ったものを食べる度に美味しいと褒めてくれて、俺に笑顔を見せてくれた。そのお陰で原点に立ち返ることが出来た。もう一度ケーキを作れるかもしれないと思えたんだ」
「誠司さん……」
「お前をうちに連れてきて本当に良かった。俺自身、少しおかしいんじゃないかと思うくらい強引だったのは自覚していた。必死にお前を連れてこようとする自分をどこか俯瞰で見ていた。それでもお前を側に置きたかったんだよ」
「私も冗談に紛れて、エッチな下心丸出しの課長の家に上がり込んで、拒否しない自分は何なんだろうと実は思っていました。今思えば、最初に店で助けられた時から誠司さんに惹かれていたんだと思います」
「……下心丸出しとは何だ。俺は大分我慢していただろ」