課長のケーキは甘い包囲網

「よく言いますよ……最初から胸の谷間がどうとか、ほっぺにキスしたり、結構セクハラまがいでしたよ」

「まあ、言われてみればそうだな。すみれ、よく逃げ出さずにいてくれた」

「だから言ったでしょ。最初から私わかっていて……騙されてあげたんです」

「じゃあ、両思いだったんだな。何しろ、お前も下心があったんだろ?」

「失礼な。エッチな下心なんて皆無でした。ほぼ未経験の私に何を言うんです?変な話、恋愛経験に乏しい私は上司としての課長を信用していたんです。とにかく、恩人だったし、お兄ちゃんみたいだったし……」

「だから、お兄ちゃんって言うのはやめてくれ。お前のお兄ちゃんは俺じゃない」

 私は笑いながら、食べ終わった食事を片付けて、ケーキを出した。

 有紀さんから送られてきたケーキは特製ケーキだった。店では売られていないものだ。

 彼のために作ったんだろう。メロンやイチゴ、オレンジなど旬のフルーツを全部盛りのケーキ。
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