課長のケーキは甘い包囲網
本当は値段かなり高かったはず。請求書の金額より、もっとしたと思うんだけど、彼女がかなり安くしてくれていた。
ハッピーバースデーのプレートもケーキに立ててあった。
「お前、このケーキ……いったいどうした?」
彼は黙って立ち上がり、キッチンへ行くとパッケージを見て戻ってきた。
「特製ケーキですよ。どこにも売ってません。注文品ですからね」
ケーキを大きく切って彼の前に出した。何も言わないで私を睨んでる。一口食べた彼は、ため息をつきながら呟いた。
「お前。まさか、あいつに直接頼んだのか?」
「春日課長が紹介してくださいました」
「……あいつめ」
「でも、全て私が頼んだことです。イチジクのケーキを食べたときから一度会いたいとずっと思っていました。こんな美味しいケーキを作る人に悪い人はいませんよ、絶対」