課長のケーキは甘い包囲網

 本当は値段かなり高かったはず。請求書の金額より、もっとしたと思うんだけど、彼女がかなり安くしてくれていた。

 ハッピーバースデーのプレートもケーキに立ててあった。

「お前、このケーキ……いったいどうした?」

 彼は黙って立ち上がり、キッチンへ行くとパッケージを見て戻ってきた。

「特製ケーキですよ。どこにも売ってません。注文品ですからね」

 ケーキを大きく切って彼の前に出した。何も言わないで私を睨んでる。一口食べた彼は、ため息をつきながら呟いた。

「お前。まさか、あいつに直接頼んだのか?」

「春日課長が紹介してくださいました」

「……あいつめ」

「でも、全て私が頼んだことです。イチジクのケーキを食べたときから一度会いたいとずっと思っていました。こんな美味しいケーキを作る人に悪い人はいませんよ、絶対」
< 288 / 292 >

この作品をシェア

pagetop