課長のケーキは甘い包囲網

「うふふ。あー、美味しい。これ最高傑作ですよ、きっと」

「すみれ、これを見ろ」

 誠司さんがバッグの中から小さな商品パックを出してきた。
 開けてみると、可愛い練り切りの和菓子が出てきた。これって……。

「これってもしかして……」

「ああ、やっとできたよ。お兄さんといろいろやり取りして作った和菓子だ。ああ、そうだ。何をモチーフにしているか、わかるか?」

 丸い黄色の練り切りの和菓子のうえにすみれの花がかたどられた薄紫の寒天がのっている。

「……すみれ?」

「ああ、そうだ。お前の和菓子だ。これを料亭初めての商品として売ることになったぞ」

 私は嬉しくてその和菓子をじっと眺めたまま涙を流した。
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