課長のケーキは甘い包囲網
お客様を覚えるのは得意。多分初めてだ。彼がイケメンなのは間違いない。するとイケメンと言われ慣れているんだろう、そのことには何も触れず、彼はニヤッと笑うとうなずいた。
「そうだね。昼間は初めて来たよ。夜に来たことはある。最近越してきたんだ。駅の近くに出来たマンション。あそこにね」
入り口から見える高層マンションを指さしている。ああ、あのすごく立派なマンションか……エントランスロビーのところを来るときに通りがかるからよく見るけど、とても高級感がある。
この人すごいところに住んでるんだな。お金持ちなのかな?
「だからね、これから来ることがあるかもしれないからよろしくね」
「はい、こちらこそ。今日は本当にありがとうございました」
そう言いながら、彼の出したおにぎりやお茶などを会計する。すると後ろから店長がカボチャプリンを出してきた。彼に申し訳なさそうに頭を下げながら言った。
「……先ほどは従業員を助けて頂きありがとうございました。こちら、気持ちばかりですがお礼です。よかったらどうぞ」
そんな店長を見て、彼は鮮やかに笑った。
「いや。じゃあ、お言葉に甘えます。ごちそうさまです」
「いえ、こちらこそ。ありがとうございました」