課長のケーキは甘い包囲網

 課長の挨拶が終わるととりあえず宴会が始まった。歓迎会という名前の宴会だと言っていたがその通りだった。

 私の元気がないので、武田君が私の代わりに部長へお酒を注いだりしていたが、武田君は男性。やはり私が代わった。

 ピッチャーから部長のコップへビールを注いだ時に慣れないのもあって盛大にこぼしてしまった。

「田崎さん、君はおっちょこちょいだな。もう少し慎重にゆっくりやりなさい。出来ないわけじゃないからさ」

「……はい。すみません」

 部長にも、気にしていたことを言われて傷に塩を塗り込まれた感じになった。部長は桜井さん達若い綺麗な女性陣のところへ乗り込んでいった。

 課長はそんな私を見て、コップを差し出した。

「ほれ。練習しろ」

「え?」

「ほら、ビール入れてくれよ」

「あ、はい」
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