課長のケーキは甘い包囲網

 気を取り直して、沢島課長に慎重にゆっくりビールを入れた。すると今度は入れすぎて泡が流れてしまい、課長が急いで口を付けて飲んでくれた。

「す、すみません。はあ」

 テーブルの上を布巾で拭いて謝った。すると、課長が言った。

「らしくないなあ。どんなことがあっても頑張るのが田崎だろ?苦情にも負けず頑張ってバイトもやってきたくせに。というか、お前、バイト先でも何かやらかしたりしてただろ、きっと」

 むう。いかげそを口に含みながらちろりと私を見て課長が言った。

「……その通りです。発注ミスをして二万円損失を出し、給料から引かれたこともあります」

「ひえー。バイトで引かれたのか?それは可哀想だったな。でも辞めないで頑張ったんだろ?今回みたいに落ち込んでも前向いて頑張ったんだろ?」

「……はい。辞めないのかって他のバイトの人からも聞かれました。でも田舎の母や応援してくれている兄にコンビニバイトしている話していたのに、すぐ辞めたら心配かけてしまいそうで辞めなかったんです」
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