課長のケーキは甘い包囲網

「なるほど……お前それでこっちへ逃げてきたんだな?」

「まあ、そうですね。歴史が好きで、本ばっかり読んでたし、勉強はそこそこ出来たので大学受かってこっちへ出てきました」

「それで、縁談はなくなったのか?」

「……それが……」

「まさか、まだあるのか?」

「あ、いえ。三年働いて相手が捕まらないなら戻れと言われていて、今時そんなこという親います?まあ、適当に聞き流していれば時効になって忘れるだろうと思っていたんです。それが、結構本気らしくて。昨年末にも帰ったらまた言われて、まだその話生きていたのかとびっくりしました」

「それは大変だな。付き合っている人はいないのか?」

「いたらとっくに説明してますよ」

「まあ、まだ期限まで時間はあるんだろうし、頑張ったらどうだ?」
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