課長のケーキは甘い包囲網
課長は膝を折って、呆れている。
「何、中学生みたいなこと言ってんだよ。すぐに引越しろ。そうだ、次の家が決まるまで、俺のうちで特別に部屋を貸してやる。俺は3LDKだが、一部屋余っている。鍵もかかるぞ。引っ越し先が決まれば出ていけばいい」
「ええ!?な、なにいってんですか、課長。訳わかんない……」
「いや、結構本気だぞ。これは危ないだろ。しかも一階角部屋ってお前何考えてんだよ」
「契約したときは安かったし、何も考えてませんでした……」
「はー。親御さんここを見に来てないのか?これを見たら普通の人間は反対するぞ」
「うちの親は忙しいんです。ほぼ一年間休みありません。兄も修行中だし同じです」
「困った奴だな。ここは危なすぎる。人事の、しかも直属上司として、これを知りながら放置できない。とにかく、新居が決まるまでうちへ来い」
「嫌ですよ」
「頼れる恋人もいないくせに。だいたい、他に同居できるような友達が近くにいるのか?」
「失礼な、友達くらいいます。でも、みんな彼氏持ちで忙しいですけどね……」