課長のケーキは甘い包囲網

 そうなのだ。何故か大学で出会ったこっちの女友達はたいていみんな彼氏がいる。週末はみんなデートで忙しいのだ。私の相手はしてくれない。

 でも、私はひとりで過ごすのが好き。テレビを見たり、本を読んだり。ひとりで買い物するのも大好き。だから不自由に感じることはない。

 言っておくが、決して負け惜しみではない。今でもコンビニに行くと店長が余った弁当をくれたりする。それをもらって食べて、賞味期限が近いものを安く買って帰ってきていた。何の不自由もなかったのだ。

 課長が横目で私を見てため息ついている。

「しょうがないから、しばらく俺の所に来ることで決定。今週末荷物片付けて少しうちへ持ってこい。時間が余ったら家探しをしよう……ほら、早く部屋に入れ。見ていてやる」

「はい、はい。もう、お父さんみたい。ふああ……」

 あくびをしながら頭を下げた。

「はあ?誰がお父さんだ!お前のお父さんなんてまっぴらごめんだ」

 何を言っても聞いてくれなさそう。諦めた。眠いし、疲れたし。今日はもういいや。
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