課長のケーキは甘い包囲網

「でも、そうだ、二人が言い争いしても睨み合っていても驚かないでね。お茶だけ出して下がってくればいいから……」

「え?それってどういう意味ですか?仲が悪いんですか、おふたりって……」

 桜井さんはうなずいた。そして人差し指を口の前に当てた。なるほど。わかりましたと私はうなずいた。

 お茶を入れてノックをした。失礼しますと言って入った。何これ?空気がピーンと張り詰めてシーンとしている。やな感じ。さっさと出よう。そう思ったときだった。

「君は新人?見たことないからな。沢島の下にいると大変だろ。みんな怖いって言ってるもんな」

 見るとひげ面の少し太った男の人が私を見てにやりとしている。どういう意味?

「……あ、あの。課長は怖くありません。良くして頂いています」

「へえ?そう言わないと後で怒られるんじゃないのか?」

 バンっ!すごい音がした。課長が机を叩いた瞬間だった。私のおいたお茶がこぼれた。

「っ!か、課長。どうしたんです?」

 私は驚いて沢島課長に聞いた。すると課長は地を這うような低い声で言った。
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