課長のケーキは甘い包囲網
思いきって東京へ出てきてよかった。学生生活は楽しい。母は私がここまでやるとは思っていなかったようで、援助してくれた。兄も応援してくれている。ちなみに兄は他の料亭で板前修行中だ。
大学は奨学金でまかなって、母が家賃を出してくれているが、生活費くらいは自分で稼ごうとコンビニでバイトしている。でも、一年前に仕事帰りの夜道で客の男の人に絡まれてから怖くなり、日中だけのシフトに変えた。
三ヶ月後。私は予定通り就活に入った。
大好きな洋菓子のメーカーだった。駅前にあるその洋菓子メーカーのケーキが大好きで、何か自分にご褒美をしたいときはそこで買って帰った。
それで単純な私は、この会社に入社できたらいつも社割でケーキが安く買えるだろうと思い、ウキウキと受験した。
最初はやはり店舗で販売担当になるらしいので、コンビニで長い間バイトをしていたというのは割と強みだったらしい。
「困ったお客さんにはどのように対応していましたか?」と面接で聞かれた。
どんな店でもやはりそういう事ってあるんだろうなと思った。
私は早速カボチャプリンのお客様に助けられたことをエピソードとして話した。そのお客様のやり方を見て、自分も商品の上手な勧め方や接客する方法を学んだと話した。