課長のケーキは甘い包囲網
すると、面接官のひとりが「くくっ……」と笑った。
びっくりして笑った人を見たら、メガネを掛けて一番端に座っている男性だった。その人は顔を上げてニヤリと私を見て笑った。誰?知り合いだろうか?その人をみんなが見つめている。
面接で真面目に一生懸命答えたのに、笑うなんてひどい面接官だなと隣に並ぶ他の受験者もみんな思ったろう。彼はメガネを外し、私に向かって言った。
「やあ、久しぶり。あれから僕が行く時間に君がシフトに入っていないから会ってなかったけど、僕が助けたことをこんな風に今でもよく覚えてくれて接客に活かしてくれていると聞いたら名乗らずにはいられなかったよ」
「……え?ま、まさか、あのときの……?」
そこには、見たことのある微笑みを浮かべた男性がいた。Tシャツではなく、Yシャツになっていた。そして、メガネも……あの時はしていなかった。
「そう。あのとき君に助け船を出したカボチャプリンの人とは僕だよ」
嘘でしょ!?恥ずかしい……さっき、カボチャプリンの人って説明したんだった。はー。周りの他の面接官がそうだったのか、すごい偶然ですねえと笑い合っている。彼は私に向き合って言った。