課長のケーキは甘い包囲網

 そう言ってエンジンを掛けて走り出した。

 大型スーパーで食料品や私のコップや箸、女性用の浴用シャンプー類などを買ってくれた。なんかお母さんみたい。そう言ったら、また怒られた。

 マンションへ入った。外見は何度も見たことがあった。

 新しいし綺麗だと思っていたが、想像以上だった。エントランスのタイルもおしゃれだ。

 部屋はどうなんだろうと楽しみだった。すごく綺麗な部屋。しかも、掃除がキチンとしていて、課長がいかにすごいかわかった。何より驚いたのはキッチンだった。

「課長。このキッチン、すごくないですか?鍋やら機械もたくさんあって、調味料もこんなに……本格的にやられるんですね」

「当たり前だ。それを勉強していたんだからな」

「じゃあ、何故コックさんに、違った、パティシエにならなかったんですか?」

「以前はパティシエだった。そういう部署にいたんだ」

「そうだったんですね。でもどうして今はやってないんですか?」
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