課長のケーキは甘い包囲網
そう言って、ゲストルームに連れて行ってくれた。ベージュの壁紙。男女だれでもよさそう。机と椅子もある。準備してくれていたのは本当だった。ベッドもカバーが掛かっているけど、綺麗になっている。さすが課長。
「すごく素敵です。ありがとうございます。綺麗に使います」
「そうしてくれ。スーツケースの中身はクローゼットへいれてくれていいぞ」
「はい」
課長は横に来て、私を見おろした。
「うん、やっぱりその服、お前になかなか似合っていて可愛いな」
「課長のお好みにあったようでよかったです」
「ここにせっかく来たんだから、毎日頑張って俺のために可愛い格好をしてくれ。目の保養になるように頼む」
「なんですかそれ?……私に期待されても困ります」
「お前は料理が苦手なようだが、何が得意なんだ?」
得意……そう言われてみれば、しいて何もないかもしれない。