課長のケーキは甘い包囲網

料理の師匠

 
 課長と同じ所に住んでいるのだ。誰かに見られそうだと心配していたが、そんな心配はあまり必要なかった。

 住んでいる駅が何しろ各停しか止まらない駅。しかもたいていの人が帰りは下り電車なのに、上り電車で会社から五駅も先の駅だ。ほとんど、いや、全くといっていいほど会社の人に遭遇したことがない。

 元々同じ駅を使っていたのは知っている人が多いし、駅前のうちの店の店員さんは現地採用のパートアルバイトさんが半数以上。まあ、要するにばれずに同居が普通に出来てしまった。

 しかも、至って普通にシェアハウスしているだけだ。

 課長の料理はすごく美味しい。本当にびっくりだ。家ではまかないなど和食中心だったが、課長は洋食が多い。

 簡単なデザートもたまに作るがこれまためちゃくちゃ美味しい。課長をお嫁さんにしたいといったらまた笑われた。

「じゃあ、俺よりも働いて俺を養ってくれよ。どう考えてもお前より家事は俺の方が得意だろ。お前そんなんで子育てできるのか?」

「私、子供は好きです。子育てだけは頑張る予定なんです」
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