課長のケーキは甘い包囲網

「たいしたことないので、大丈夫です。課長は休んで下さい。ありがとうございました」

 お礼を言うため頭を下げたら、その頭を撫でられた。まるで子供みたい。

「報酬の代わりに、明日からはお前がお茶やコーヒーを入れてくれ」

「はい、頑張ります」

「まずかったら、ペナルティーもらうぞ、本気でやれ。そうじゃないとお前は身につかない」

「はい」

「よし。じゃあ、後頼んだぞ。それと家探しだが料理を学ぶ間はうちにいろ」

「え?」

「じゃあ、おやすみ」

「はい。おやすみなさい……」

 翌日から課長に料理を教えてもらい始めた。

 最初は塩と砂糖を間違えたりして、本当に呆れられた。

 だが、課長の前だと恥をかいてもいいかと思えるのが不思議だった。
< 77 / 292 >

この作品をシェア

pagetop