課長のケーキは甘い包囲網

「えー?課長、先に帰ってたんですか?この甘い匂いはなんです?」

「きちんと買えたか?」

「はい。色々買えましたよ。イチゴは何にするんですか?」

「そうだな。お前の誕生日だからとりあえず誕生日ケーキに使う。残ったら、ムースにでもするかな」

「えー、ホントですか!?嬉しい。課長の作るケーキって初めてですよね」

 それでこの甘ーい匂いが部屋一面にしていたのか。

「そうだな。実は俺自身ケーキを焼くのが……ほぼ五年ぶりだ。誕生日だし特別に作ってやることにした」

 五年ぶり?どうして?

「どうして五年ぶりなんですか?忙しくて、パティシエが仕事でなくなったから、作らなかったんですか?」

「……ケーキ以外のデザートはたまに作っていただろ」
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