課長のケーキは甘い包囲網

「ケーキだけどうして?でも、私の誕生日だから久しぶりに作ってくれるんですよね。師匠、ありがとうございます」

 頭を下げてお礼を言う。課長は振り向いて言った。

「そうだな、特別だ。この俺がやっと……ケーキを焼く気になった。まあ、ある意味特製ケーキだ。久しぶりだし失敗もあり得る」

「課長が失敗?あり得ませんよ。私も手伝います」

 エプロンをして立ち上がった。

「じゃあ、買ってきたものを冷蔵庫に入れて、そこにある野菜を洗ってくれ。ケーキはもうオーブンに入っている」

 しばらく料理をして、チンという音を聞いて、課長は焼き上がったケーキを見に行った。

「できましたか?」

「ああ、いい感じだ。久しぶりだな、この感覚、この香り……」

 私も見に行くと課長が型に入ったスポンジケーキを出していたところだった。
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