課長のケーキは甘い包囲網

 横で拍手をしながら小さく飛び跳ねた。

「ああ、嘘じゃなかったようだ。俺も勘が鈍ってもう作れないかと思ったが、案外身体が動きを覚えていた。おい、そこで跳ねてないで、イチゴを冷蔵庫から出して持ってこい。飾る分が残してある」

「はいはーい」

 課長の美しい手技に見とれているうちに、ケーキ屋さんのイチゴのスポンジケーキが出来上がった。

 美しすぎる。とりあえず写メ。ひとりで興奮している私を尻目に、課長は満足そうにしていた。

「蝋燭はなしでいいな?」

「もちろんです。こんな綺麗なケーキに穴を開けるのは嫌です。切りたくない……」

「馬鹿め。切らないと食べられないし、俺の作った美しい断面が見られないだろ」

「……た、確かに。あ、コーヒー入れますよ」

「今日は俺がやってやる。何しろ誕生日だからな」
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