課長のケーキは甘い包囲網
そう言うと、課長はとっておきだというダージリンのファーストフラッシュという春摘みの新茶を出してきて入れてくれた。
美しい断面。ピンク色の中に刻んだイチゴが見える。大きな口を開けてケーキを一口食べた。
「うわあ、美味しい。柔らかくて、このソースも甘酸っぱい。はあ……幸せだ。ありがとうございます、課長。夢みたい……」
「そんなに喜んでもらえて嬉しいよ。明日のほうがもう少し落ち着いて美味しくなるだろうけど、まあ、できたてはほとんど食べることが出来ないから貴重だな」
「今日だってめちゃ美味しいです。あーん、美味しいよー」
「何、泣いてるんだよ!?」
私は気づいたら涙目になっていた。
「だ、だって、嬉しい。課長忙しいのにこんなにしてくれて……私、課長のお誕生日に何をしたら返せますか?」
「そうだな、色々してもらうよ。俺の誕生日は先月だからあと一年先だ。その頃にはお前は何でも作れるようになっていて今度こそ俺のために作ってもらおうかな」