課長のケーキは甘い包囲網

「ええー!?君、確か……沢島の所の新人君だよね?えっと……」

「あ、はい。田崎と申します。先ほどは慌てて挨拶もせず、切ってしまいすみませんでした。どうしたらいいかわからなくて、パニックになってしまいました……」

「おい、沢島。お前達そういうことなのか?教えてくれたって良かっただろ」

 沢島課長は春日課長を無視して、スタスタと荷物を持って先に部屋へ入って行った。

 驚くことに春日課長は来慣れているのか、靴を脱いで迷いなく棚からスリッパを出して履くと、後ろからリビングへ入ってきた。

 冷蔵庫と向き合って買ってきたものを入れている課長に声を掛けた。

「コーヒーでいいですか?」

「ああ。しっかり入れてくれ。春日は俺のいれるコーヒーや料理が目当てでこうやってたまに来るんだ。すっかり言うのを忘れていた。今週来るかもしれないと聞いていたんだ」

「……はあ、なるほど」
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