課長のケーキは甘い包囲網

「俺はおととい作ったケーキを切るから、お前コーヒーな」

「はい」

 私はこの間習ったとおりにコーヒーを入れていく。大分上手になってきた。

 味も、香りも、ここまで違ってくるとは目からうろこがおちるとはこのことだ。

 春日課長はリビングに座って、そんな私を黙ってじいっと見ている。

 沢島課長が何か言うのを待っているようだ。まるで、忠犬ハチ公。

 三人で向かい合って一息入れたところで、沢島課長が春日課長に私のことを説明してくれた。

「なるほどね。危ないアパートに住んでいる彼女を助けるために家が決まるまで部屋を貸していると。ふーん。沢島お前、俺は結構長いことお前と親しくしてきたが、そんなことをするような人間には見えなかった。いやあ、俺の知らない間に沢島は大分変わったんだなあ……」

 冗談には見えない目でじろりと睨んでいる。
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