課長のケーキは甘い包囲網

「そうだったのか。君は沢島が好きなんだろ?」

「そんな違いますよ。ただ部屋を借りて料理を教えて頂いているだけです」

「でもここに同居している。何も考えずに女の子を同居させるわけないし、君だって何も考えずにいるわけじゃないだろ?」

 それはそうかもしれない。料理を習っているうちに、課長に特別な思いが生まれているのも事実だ。

「沢島もその気なんじゃないか?さっきの様子を見ればわかる。田崎さん、振らないでやってくれよ。前の彼女のときのこともあるからさ」

「何言ってんですか、春日課長」

 私は呆れて春日課長を見た。告白もされてないのに、何故そういう話になるのよ。

 すると、いい匂いがしてきて、足音がした。振り向くと沢島課長が鍋を運んできた。

「何を話してんだ。おい、春日、余計な話するなよ」

「まあ、いいじゃないか。お前のこと、彼女心配しているんだよ」
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